及川みのる展
期間: 2008年06月08日 (日) 〜 2008年06月17日 (火)
【及川みのる展によせて】
行方定まらず「土の人」は揺れて、小さな白い歯がこぼれ落ちる。
奇怪なようで優しい。まるで寒山のようだ。
寒山が文殊の化身であったように、及川みのるの「土の人」も何かの化身かもしれない。
「土の人」は揺れて優しい表情を生み出す。
見るほどに心に染み入る。
そして癒しの時を分け与える。
及川の優しい心と精緻な技術がある具象に結実した。日本から発信する現代美術の一つの方向性がそこにある。
「土の人」とじっと対面して欲しい。静かに共に時間を過ごして欲しい。
「土の人」は、いつも待っているだろう。
その空間を提供できることを喜びとしたいと思う。
【「女神」の誕生】
及川みのるの作品に今回「女神」が加わった。
「女神」は「土の人」を守るという。どのようなインスタレーションになるのか。
想像の翼は限りない。
現代の神話がそこに生まれる。
【及川みのるさんに接して】
及川さんは背の高い笑顔の優しい朴訥なスポーツマンです。
東京芸大時代はラグビーに熱中していたと言います。現在は霞ヶ浦の近くで制作を続けています。子供が好きで、芸術を真摯に思い、「土の人」を生み出しています。
その思いが伝わることを願っています。
【現代芸術作家 及川みのる】
「現れ出ずる」
かつて神仏は出現した。
山頂に、洞窟に、岩陰に、あるいは滝や川辺に。
あれいずる
それは人間の幻想が形象となる最も劇的な場面でもある。
あれいずる神仏の姿
それは衆生の救済におもむく神仏の力の源泉を表している。
その動き、動であることが救済の力を示す。単なる動作ではない。
混沌から生まれるでる生成の動作が力を与え、神仏はその力を誇示する。
及川みのるは、現代の仏師である。
及川の「土人(つちのひと)」は、生まれでた瞬間の仏である神である。それは奇怪な面相で混沌の泥濘からいま誕生したかのように笑う。
その笑った口元から白い歯がこぼれる。それは揺れ動き、誕生の瞬間の動であることを表現する。
及川の「土人」がゆさゆさと揺れるとき、生成の荒々しさに人々の魂が揺さぶられる。
揺れ動く「土人」は、記号化されるあらゆる現代社会の位相に疲弊する人間の魂を揺さぶり、悪鬼を振り落とし、安堵と静謐をもたらす。
ある夜、及川は自ら制作した「土人」に粛然とひざまずく。そのとき、コンピュータエイジの仏像が生まれた。
存外、仏の誕生もこんな姿かもしれない。
及川みのる 東京芸大陶芸科卒
本人は陶芸から美術に転向したという。
陶芸に悩み、美術に方向を定めたという。粘土を素材とした美術作品を及川は作るという。
しかし、その作品は、実に工芸的である。揺れ動く「土人」は新世紀の神仏像そのものであり、それは正統なる工芸の仏師の工夫に連なる。
美術から陶芸に転向し、工芸の陶芸の本質がつかめぬままに稚拙なオブジェを陶芸と称して作り続けて終わる者が多い中で、及川は確実に時代の求める「仏師」の道を歩む。
それは世界へと向かう芸術工芸のひとつの道である。